カテーテルアブレーションのご紹介

はじめに

不整脈の根治治療であるカテーテルアブレーションを2013年7月より当院で開始しています。出身である日本医科大学付属病院 循環器内科(不整脈治療グループ)との強い連携を得て、治療可能な施設が現状でも限られている、心房細動に対するカテーテルアブレーションも当院で施行可能となりました。

堀江 格

循環器内科

堀江 格
(ほりえ つとむ)

心房細動とは

心臓は収縮と拡張を繰り返し、ポンプの働きをしています。4つの部屋からできていて、上の二つは心房と呼ばれ、補助ポンプの働きをしています。下の二つは心室といい、主ポンプの働きをしています。心房には1分間に60~80回の規則正しい電気興奮を生み出す “洞結節(どうけっせつ)” という場所があり、ここから電気興奮が、まず心房に伝わって収縮し、次に心室へとひとつひとつ伝わり、収縮して脈拍を作り出します。先に補助ポンプ、次に主ポンプの順に動く繰り返しが、規則正しい一定の脈拍を作り出しています。心房細動になると、1分間に250~350回もの電気興奮が洞結節1ヵ所ではなく、心房の至る所からたえず湧き上がる状態となります。この異常な電気興奮は、不規則にしか心室へと伝わることができず、結果として脈拍が速くなり、またその間隔がバラバラになります。

心房細動は歳をとるにつれて発症率が高くなり、70歳代男性では、およそ4%の方が発症し、患者さんの総計は国内で70万人以上と推測されています。高血圧、ストレス、メタボリック症候群の人に多くみられ、症状は「ドキドキする」、「階段を上るのがつらい」などです。一方で、患者さんの半数は自覚症状が乏しく、健康診断の心電図検査ではじめて見つかることが多くあります。

心房細動の患者さんは、脳梗塞の起こるリスクが健康な人に比べて約5倍になると報告されています。心房細動中は、心房がたくさん興奮しているのだから良さそうなものですが、絶えず収縮して、拡張する時間がなく、心房がけいれんしている状態となります。補助ポンプとしての働きが失われ、血液の流れがゆっくりになって、よどんでしまい、血液が固まって心臓の中に血栓ができてしまうのです。その血栓が、心臓から出て脳の血管内で詰まってしまうことで、脳梗塞を引き起こします。大きな血栓が脳の大元の太い血管を詰めてしまい、強い症状を呈することがあるため、心房細動が引き起こす脳梗塞は “ノックアウト型脳梗塞” とも呼ばれています。

カテーテルアブレーションとは

カテーテルアブレーションとは、電極カテーテル(ボールペンの芯ぐらいの太さの電極が先端についた細い管)を使った不整脈の根治手術のことです。治療用カテーテルを、体の太い静脈あるいは動脈から挿入し、血管の中を伝って心臓まで到達させます。心臓の中で不整脈の原因となっている部位まで進め、その先端電極を心筋にやさしくタッチさせます。その先端電極と、患者さんの背中に貼った対極板と呼ばれるシールとの間で特殊な電気(高周波)を流します。すると、先端電極がタッチしている直径5mmの心筋が激しく振動し、そのために生じる自分の熱で心筋が電気を通さなくなります。1回の通電でできるのはたった直径5mmの “焼灼巣(しょうしゃくそう)” です。

心房細動に対するカテーテルアブレーション(電気的肺静脈隔離術)

心房細動が起きる場所は、左右で二つある心房のうち、左側にある左房です。左房には、肺から合計4本の肺静脈が流れ込んでいて、この肺静脈から異常な電気興奮が発生し、それが左房へ伝わることにより心房細動が起きることが分かっています。この異常な電気興奮こそが治療のターゲットです。

カテーテルの先端電極を、肺静脈と左房とが合流する部位へと操作し、その場所で高周波通電を行います。電気を通さなくなった焼灼巣をつなげていき、肺静脈と左房との間で異常な電気興奮が伝わるのをブロックして、心房細動を防ぎます。これを “電気的肺静脈隔離術” と呼びます。図に示す、ひとつひとつの小さな丸い “しるし” が、肺静脈と左房との間の電気伝導をブロックする直径5mmの “焼灼巣” を示しています。

電気的肺静脈隔離術
電気的肺静脈隔離術
電気的肺静脈隔離術

高精度CTによる3次元画像情報

心房細動の治療成績は、この10年で飛躍的に向上しています。その飛躍を支えているのが、カテーテルアブレーション施行時に使用される “3次元画像情報” です。当院では、高精度CT (64列128マルチスライスCT 東芝メディカルシステムズ (株) ) を術前に施行することで精度の高い3次元画像情報を得ることができます。

128マルチスライスCT
128マルチスライスCT
東芝メディカルシステムズ(株)

当院における心房細動カテーテルアブレーション

麻酔科医師による全身麻酔管理

心房細動に対するカテーテルアブレーションは、左房でのカテーテル操作が必要になる点が、その他の不整脈の治療と大きく異なります。当院では、欧米で主流の一方で、日本においては少数にとどまっている、麻酔科医師による全身麻酔下 (気管内挿管、人工呼吸器管理) での手術を取り入れています。ひとつひとつの手技・操作を安全に、かつ確実に行うことができるだけでなく、患者さんの苦痛を最小限に抑えることができていると考えています。

術後のICU管理

心房細動に対するカテーテルアブレーションには、その他の不整脈の治療と比べて、より多くのケアが手術中だけでなく術後にも必要になります。当院では、カテーテル室から術後ICUへとベッドを移し、チーム看護 (カテーテル室看護師 + 麻酔科看護師から、ICU看護師へ) でバトンをつなぎ、患者さんに安全と安心を提供します。

治療実績

 20132014201520162017
心房細動225373450
発作性上室頻拍282115
心房頻拍00112
心房粗動21300
心室性期外収縮14212
心室頻拍・
心室細動
00163
合計738465362

最後に

心房細動は3つの段階で進行します。最初は発作性です。発作を放っておくと徐々に頻度が増えて、持続時間が長くなります。そして発作が1週間以上続くようになったものが持続性です。さらにその状態で2年間以上経過すると、もうもとには戻れない永続性となります。発作を繰り返し、心房が痛んでしまうともう後戻りできなくなってしまいます。発作性の段階であれば、85%程度は根治が可能です。2回以上の治療が必要な場合もあります。持続性になれば治療の効果は、残念ながら発作性のそれにはおよびません。心房細動は、 “適切な時期に適切な治療” を受けることで治すことができる病気です。

不整脈疾患に悩む地域の皆さんに、的確な診断とベストな治療を提供できるよう努力を続けてまいります。外来ではわかりやすく丁寧に説明するよう心がけています。わからないことは、何でも聞いてください。

外来診療日
火曜日(午前)、木曜日(午後)
経歴
1998年
日本医科大学卒
1998年
日本医科大学付属病院
 循環器内科(不整脈グループ)
2000年
海老名総合病院
 循環器センター
2002年
日本医科大学付属病院
 循環器内科
(不整脈治療グループ:カテーテルアブレーション治療、
ベースメーカ・植込み型除細動器などのデバイス治療)
2013年
1月より南町田病院に勤務、現在に至る
免許・資格
  • 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医
  • 日本内科学会認定医・総合内科専門医
  • 日本循環器学会認定循環器専門医

私たちは、急性期、救急医療および
一般医療で地域社会に貢献します。

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